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日記634


空前の横にずらすブームです。写真を横に寸断したくて仕方がないお年頃にさしかかってきました。だいたい30歳の前後でみなさん経験すると思います。「あ~むしょうに写真ずらしてぇ~」となるの。生理現象です。

むかしのアラサーは現像した写真を手作業でずらしていましたが、デジタル化で便利な時代となりました。写真機が登場する以前の時代には手立てがなくて、悶々とするしかありませんでした。現代はあらゆる欲望をうまく飼いならせる時代です。逆にうまいこと飼いならされているようなところもあるのでしょう。

最新の生理学分野の研究によると、アラサーで独身の御仁はこの現象に見舞われやすいそうです。友人や知人の結婚ラッシュに滅多打ちされると、じぶんだけ視界が横にずれてゆきますから。じつはずらしているのではなく、ほんとうに世界がこう見えているのです。

わたしは友人が結婚したら、すなおに祝福します。祝福できるタイプの人類です。都会にいれば、べつに結婚しなくともなんとなく暮らせてしまういまどきですから、それはそれで立派な決断として賛美したい。ヨッ!男前!みたいなノリで。東京にいると、たったひとりで、誰とつながらなくともさほど不自由せずいられます。

個人的には契約にこだわりはありません。小賢しく多様な選択肢を勘案したい。使えれば便利かなーくらい。肝心なことはひとつです。シンプルに「いっしょにいられればいい」と、それだけではないか。ほかになにがいるんだか。「いっしょ」も社会的なイデオロギーに過ぎないわけだが、そういう現代ならすなおに従う。ふりでもよき信仰者となれば生きやすい。そのために紙切れの契約が必要ならする。カネが必要なら稼ぐ。20代のまだ生きた経験が浅いうちはわからない部分も多々ありますが、わたしの求めるものは最小限かつ最重要なものだけです。太い幹さえ折れなければ。

最小限といえば、『白崎裕子の必要最小限レシピ――料理は身軽に』(KADOKAWA)という本を買ってみました。基本的に和食のレシピです。応用の効く小技がけっこう載っています。レシピではなくて、汎用性の高い小技を知りたい。塩の使い方とか、火の入れ方とか。なんにでも使えそうな調味料のレシピがいくつか載っているところもいい。そうだ、調味料のレシピ集がひとつあったらいいかな。いま検索したら『素材よろこぶ 調味料の便利帳』(高橋書店)という本がありました。なんでも応用できるものが好き。応用大好き人間です。王陽明です。陽明学派です。知行合一です。

料理の方法はつまり、掛け合わせでうまく化学反応を起こす方法だと思うのでその基本をおさえれば失敗もないし、一端でもわかり始めればひとつひとつレシピを参考にせずとも素材の組成から適当なアイデアがおのずと浮かぶようになります。発想ひとつでなんでもつくれるようになりたい。知識と、ほんのすこしの実験精神さえあればいける。その点をおそらく強化してくれる『Cooking for Geeks 第2版 料理の科学と実践レシピ』(オライリージャパン)も前から読みたいと思っています。ちょっと高いけど。わたしは理系的な知識が乏しいけれど、根底にある考え方がギークっぽいところもある。

白崎裕子さんの本では、弱火がよく推奨されています。弱火だと時間がかかるけれどそのぶん筋トレもできて一石二鳥です。暇なら筋トレしろ!スープが沸騰するまでスクワットやプランクを何セットできることか。いやそんな時間かけてられっか!とも思います。でも、1日のうちに時間の流れの緩急をつけるのは悪いことではない。夜の時間くらいは。暗くなったら、眠りに向かうための時間の流れをつくる。やがて滞留させる。淀みに浮かぶ。





スマホのメモ帳から。
テレビ東京の番組で、93歳のおばあさんとバルセロナ出身の外国人旅行者が街角で交わしていたやりとり。




―どうしたら長生きできますか






朝晩30分さんぽする
ただ歩いて眺めて帰るだけ






―それは極楽じゃないですか







極楽よ








番組の文脈と余白のないテロップ演出込みで見るとピンとこないけれど、文脈と映像と声をぶっこ抜いて行間をあけて文字に起こすと素敵な会話だと思う。なんか映画のセリフのようにも思える。想像の余白にべつの物語を浮かべられる。


コメント

anna さんのコメント…
「応用大好き人間、王陽明」のとこで笑ってしまいました。。。
nagata_tetsurou さんの投稿…
まだ年末じゃないし、笑ってはいけないルールはないので「笑ってしまいました。。。」でなく「笑いました」でよいのですよ。無料で笑い放題です。それともなにかこちら側から笑ってはいけない雰囲気をかもしだしちゃっているのでしょうか。お気遣いなく、どうぞ指をさして笑いのめしてください。