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日記672



2月16日(土)


マニアフェスタ@アーツ千代田3331へ。「約100組の極上のマニアが大集結するお祭り」です。マニアックな賑わい。ゴムホースの写真を撮っている中島由佳さんのブースでクリアファイルを買いました。おしゃれなゴムホースのクリアファイル!(※個人の感想です)。気に入っています。

多岐にわたるマニアックなブースが並んでいて、いちいち惹かれてしまうため散財警報を早めに発令し節約モードで眺めました。タカアシガニでつくられたディジュリドゥ(オーストラリアの先住民族アボリジニの管楽器)が拝めただけで満足度メーターは振り切れて33回転。もう満足。「ディジュリドゥマニア」として来ていたミュージシャンの北川和樹(スマイリー)さんの姿も遠めから拝む。





さいごにマンボウ博士の澤井悦郎さんから、マンボウ属の見分け方などをレクチャーしていただき、ぷらぷら帰りました。いまのところマンボウは大きく3種類に分類されるそうです。マンボウ、ウシマンボウ、カクレマンボウ。この3種。

ウシマンボウは2010年、カクレマンボウは2017年に発表されたあたらしい分類です。マンボウとウシマンボウの大きなちがいは、頭部の隆起と舵鰭にあります。マンボウは頭部に隆起が見られず、舵鰭が波打っています。対してウシマンボウは頭部にコブのような隆起があり、舵鰭がきれいなひとつの扇形です。カクレマンボウについては、ことばだけではわかりづらいため、「マンボウとウシマンボウとカクレマンボウ」というページの図解がわかりやすいです。この3種は鱗の形状でかんたんに判別可能だそうです。しかし写真では鱗の細部まで目視できないことのほうが多いかな。

専門家のあいだにも、まだあたらしい分類が浸透しきっていないそうなので、いまのうちにマンボウ3種を見分けられるようになると世の中から頭ひとつ抜きん出ることができます。胸を張って道の真ん中を歩けます。上座に鎮座できます。写真でもよくウシマンボウやカクレマンボウが「マンボウ」と誤記されているそうです。ライバルに先んじてパーフェクトなマンボウ属の見分け方をマスターしましょう。
 

見たいブースがあふれており、想いもあふれかえって干からびて途中であきらめました。冬の乾燥のせい。こういう場所は、事前に情報を整理してからでないといけません。目星をつけておくこと。わたしは無軌道に飛び込み過ぎです。飛んで火にいる冬の人間です。

次はゴールデンウィークの頃、東急ハンズ新宿店で開催される予定だそう。そういえば、タカアシガニ・ディジュリドゥの写真を撮るの、忘れていました。カニの迫力に立ち尽くすのみで。

こんかい気になったマニアは、ゴムホースマニア、片手袋マニア、中国バイトマニア、電気風呂マニア、便所サンダルマニア、終末観光マニア、公園遊具マニア、顔ハメ姿を後ろから撮るマニア、散歩マニア、鉄塔マニア、エアコン配管&室外機マニア、宗教や秘密結社の儀式や少数民族の祭りで食べる食事マニア、ご自由にお持ちくださいマニア、ほか多数でした。目星つけられない。金銭面の懸念もあり、ほぼ素通り。

極私的には爆笑問題のラジオで名前をよく聞いていたハガキ職人のステイゴールドさんが「大喜利マニア」としてブースを構えており、思ってもみない遭遇で感激しました。生身のステイゴールドさんを期せずして拝めた。

長いあいだ名前だけの存在であったハガキ職人の姿に興奮して思わず「ラジオ聞いてます!」と声をかけてしまった。爆笑問題の番組なのに。あとで「変だったか」と首をかしげひとり反省。しかし、ハガキ職人も深夜ラジオに欠かせぬ重要な構成要素といえばそう。だから大丈夫。合ってます。

わたしがいつもの癖でアホのような笑顔を向け話しかけても顔の表情がぴくりとも変化しない、淡々としたところは想像通りのハガキ職人らしいハガキ職人であり、まさに職人気質なんだなあと感じました。ネタをつくれる人間は往々にして白けていると思う。重い眼光。


ある種の「マニア性」とは、「名前を授ける能力」なのだと思います。名もなきところに名を与える。それは同時に、視点を生み出すことでもあります。意識を生み出す、といってもいい。

数年前まで、街中でぶらぶらしているゴムホースなんか気にもかけなかったけれど、instagramを通じてゴムホースの写真を浴びまくっているうち、ついついゴムホースのとる姿態のさまざまへ目がつられていくようになりました。無造作にとぐろを巻くゴムホースたち。片手袋も公園遊具もエアコン配管&室外機もご自由にお持ちくださいも、なんでもそうです。




情報を整理すれば、あらたな価値の筋道ができる。なにもなかった獣道に、人間の動線をつくりあげること。体系づくり。これにも近い。近いどころか、そのものではないかと思います。「マニア」な方々は、わたしの知らないこの世界の価値体系を伝えてくれます。ものの見方を教えてくれる。そういう意味で、マニアフェスタはすばらしい企画。蒙が啓かれていじくり倒される……。



自分の撮っている写真も、整理して体系化すれば価値が出るだろうか。なんて思っちゃう。名前をつければ。「散歩写真」。それだけではつまらない。「マニア」を名乗るには、もっとこう、執着心が必要なのだろう。たとえばアルミホイルばかり撮るとか……。路上には、たまにアルミホイルが落ちています。




いかなる価値も、既存の系からつたうものであると思う。既存の価値体系から、樋を引くように自分の手元にある価値体系へとうまく接続する、そんな理路をひらくことができれば、世間的には無価値なものへも、ぽたりぽたりと価値の流れがつたってくる。中島誠之助さんには、それができたらしい(twitterで拾った情報より)。

だから、なにかをつくって世に広めたいのなら、体系的にその歴史を学ぶことが重要になる。天賦の才(家系とか)がない限り、過去を汲まずに樋は引けない。「既存の体系への接続(順接であれ逆接であれ)」を意識しなければ、きっとお遊び以上のものにはならない。そう思っている。




ところで、蝉の抜け殻を見つけました。
2月の蝉の抜け殻。

冬の蝉の抜け殻マニアってのもありかもしれない。夏が終わって、みんなどこへ行ったんだろうって、ずっと不思議だったんだ。大半はどこか見えないところへ消えた。でも残っているやつもいる。

ひとつ前の記事に「冬と夏は、そもそも関係を結ばない」と書いたけど、そんなこともないらしい。おなじ場所を占めることはありえない。しかし間接的に、ごくまれに、弱く、ちいさく、冬の片隅にうずまる夏の痕跡が見つかることもある。




2月19日から1週間ほど関西にいます。更新がとどこおるかもしれません。気まぐれにスマートフォンからかんたんな更新をするかもしれません。環境が変わると、どうしても生活のルーティンが崩れます。いつものようにはいかない。

とくに厭うこともなく、柔軟にどこでもマイペースでやっていければ理想です。接続と調和を考えます。別の場所への樋を引くこと。モジュール間の連携。おいしいハーモニー。自分を転がすピタゴラスイッチ。




コメント

anna さんのコメント…
今日も更新されてませんねぇ。どうしたんでしょう。
nagata_tetsurou さんの投稿…
annaさんアラームが鳴ったので起きました。ちょっと寝過ごしたようです。いつもありがとうございます。「いつも」なんて押し付けがましくなりそうで、なかなか人には使いません。その日その日のことばづかいをする。でも、もうannaさんには「いつも」の称号を授けます(笑)。健康なので心配はいりません。2月が終わりましたね。京都へも行きましたよ。明日、書きます。
anna さんのコメント…
安心しましたー。更新を楽しみにしてます。
nagata_tetsurou さんの投稿…
ご安心を。ギリギリ締切に間に合わせるような気持ちで書きました。人間は締切がないと何もしない生きものみたい。聖書にもこうあります。

「はじめに締切があった。締切は神と共にあり、締切は神であった。」
――ヨハネによる福音書1:1