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日記835


暑い日々の再開。
風はすこし涼感を帯びてきた。

 

 

 

 自分の感情や内面には「他人」が折りたたまれて入っているから、どんな人でも周囲の人とともにしか、変わることはできない。ゆっくりと遠回りでいいから、参加している誰もが尊厳を否定されない、そこにいるだけで前よりも楽になれるような関係性を、対話を通じて作っていこう。
 

精神科医の斎藤環と歴史学者の與那覇潤、おふたりの対談本『心を病んだらいけないの? うつ病社会の処方箋』(新潮選書)より、最終章の末尾にある【この章の、そしてこの本のポイント】。誰の内面にも自分以外の「他人」が折りたたまれている。わたしはよく「ひとり」を強調するけれど、それ以上に「人間は複数としてある」とも思う。

なんだかんだでいちばんの薬は「他人」だ。そしていちばんの毒も、「他人」なのだろう。精神的な症状に効く薬はさまざま開発されており、それはそれとして素晴らしい。しかし関係性をないがしろにしては、堂々めぐりになるだけではないだろうか。自分自身の治療経験から、ずっとそんな思いを抱いている。


與那覇 実はデイケアでSSTをやっていたときに、忘れられないエピソードがあるんです。患者さんが「働いているときに苦しかった状況」をロールプレイで再現するのですが、どう考えても「病気」なのは患者を追いつめた人の方でしょ、という話がいっぱい出てくる。パワハラ上司とか、モンスタークレーマーとかですね。彼らに攻撃されてうつになるのは「普通の人」であって、ほんとうに治療が必要なのは相手の側なわけです(苦笑)。
 これって変じゃないですかと尋ねたところ、臨床心理士の答えが振るっていて、「たしかに上司やクレーマーがクリニックに来たら、病気と診断される可能性が高い。ただ彼らはたまたま、いまのところ地位や立場に守られていて〈本人が困難を感じていない〉から、来院せず、病気だと言われていないだけですよ」と。つまり誰が心の病気と呼ばれるのかは、しばしば当人の気質や症状以上に、社会で置かれている環境で決まるわけですね。


身に覚えのあるエピソードだ。理想をいえば、地位や立場の保証されている人ほどフェアな精神性を忘れずにいてほしい。しかし、現実はしばしば真逆である。夢みたいな理想かもしれない。わたしはペーペーだけど、「年齢が上」というだけで上下関係の構図をつくる若い人もいるため、そこは気をつけている。自分では対等だと思っていても、相手にとってはそうではない場合も多い。年齢は、知らぬ間に得ている立場なのね。気づいたらもうこんなトシ。生得的な属性はぜんぶそうか。知らぬ間に得た立場。

「社会人として」ということを、このところ強く意識するようになった。「他人として」と言い換えてもいい。仕事以外の場面でも、広く自分がどのような他人であるか。隣人としての自我みたいなもの。そこが「社会人として」のキモだと思う。

わたしの考えでは、自他の区別が鮮明である人のほうがめずらしい。人々の認知は無自覚にぐちゃぐちゃ混ざりあっている。「社会」という茫洋とした概念も、カオティックな混ざり合いの帰結として意識にのぼる。

誰のなかにも多様な「他人」が混入している。さらに、日々「社会」と混ざり合う。自分が、できるだけ薬となるような「他人」であるといい。そういうことを意識するようになった。できるだけ。いい感じの混ぜもんでありたい。このブログも、混ぜもんの一貫。わりと毒っぽい部分もあるかもしれない……。



8月19日(木)

「バカが政治やってるし、天気もバカだし、まともなヤツはどこにもいねえな!」と路上で缶ビール片手に叫ぶおじさんがいた。勢いがよかった。生きのいいおじさん。

歯医者で歯ぎしりを注意された。いつも言われる。奥歯がすり減っているという。マスク生活で増えたかなー。無意識に、ついギシギシやってる。さいきん、歯ぎしりによって奥歯が割れた知り合いの話を聞いた。そこまでいかないと思うが、気をつけよう。前歯なら割れたし。

連日、月がきれいに出ている。写真はきのう撮ったもの。わたしは「月がきれい」と言いがち。月を見るとかならず言ってしまう。誰にでも、あたり構わず言いたくなる。このぶんだと死ぬまで言いつづけるのだろう。月の写真も撮りがち。


コメント

anna さんのコメント…
関西は土砂降りの雨が1週間続いてます。少し涼しくなりましたけどね。
私も歯医者さんで奥歯に力がかかりすぎですって言われました。なんか歯を食いしばってるんじゃないかと。
まあ、つらいことが多いんかな。

京都から滋賀に引っ越しました。都落ちです。
nagata_tetsurou さんの投稿…
まあ、つらいことは多いですね。笑

無意識でも歯を食いしばってると、アゴの筋肉が発達してきませんか。なんかアゴだけムキムキになってる気がするんです。アゴの筋肉美を競う大会があったら優勝できそうなくらい。

東京は晴れていますが、よく短時間の豪雨に見舞われます。急に降って急にまた晴れる。情緒不安定な天気です。夜は虫の声が響いて、歩くと秋を感じます。お引っ越し、お疲れさまです。滋賀からもコメントお待ちしております。