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日記953


 

 

 


12月1日(水)
 マラソン大会。8000mと少し。走った。結構走れるものだ。650人で走ったうち447番。

 

 

『だいありい 和田誠の日記1953~1956』(文藝春秋、p.200)より。1954年(昭和29年)12月1日。和田誠18歳。ちなみに前年のマラソン大会は439番。

 

日記は、まだ何者でもなかったころの“その人”に触れられる。たいてい、のち有名になるにしても、無名時代からさしたる変化は見られない。その人は最初からその人だった。

 

よほどのことがないかぎり、人間はあまり変わらないのだと思う。愚直に自己の一貫性を保とうとする。むろん、経験や知識や環境によって細かくは変化する。しかし大きくは変わらないのではないか。出目には逆らえない。朝起きて体が虫になっていても、ザムザはザムザのままなのだった。

 

マラソンといえば、わたしもよく走る。夜中に、まったく車の通らない直線道路を全力疾走する。それを何本か繰り返す。結構走れるものだ。定期的に全力を出さないと、全力の出し方を忘れてしまう。ときには、近所の急坂を全力で駆け上がる。

 

これって、自分のなかでは暴力衝動と似ている。とにかく暴れたい。がんじがらめの体を解放するようにパーッと走ると、すっきりする。肉体を適当に飼い慣らす方法として走っている。なんでもいいけれど、ときどき制限をなくして思いっきり何かしないと息苦しくて発狂する。きっと多くの人が飲み会などのイベントで行う、ごくふつうのことだ。集団でパーッとできない質だから、ひとりで黙々とやっている。

 

 

 

12月1日(木)

 

窓をあけると冬の匂いがした。


 

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