12月6日(日) 北海道・札幌 三角みづ紀
すぐに溶けてしまう
かたちを崩して
逃げないで、と額が叫んだ
アラームが鳴るまえに
灯油ストーブを点けて
フライパンをのせる
黒くて重いもの
たっぷりの油に 生きる
ための適度な刺激
ニュースでは
会ったことのないひとが
ひたすら謝罪をしていた
ふたりの日常の音は
静謐な氷点下で
愛情から情を剥ぎとって
愛がいい 愛だけでいい
じつは陽性で入院していたんだ
という友達の心配はした
会ったことのないひとの
不倫への謝罪には興味がない
たった一文字を
いつも剥ぎとっている
『空気の日記 23人の詩人が綴ったコロナ禍のリレー日記365日』(書肆侃侃房、p.324)より。2020年12月6日。不倫への謝罪には興味がない。わたしもそう思う。会ったことのあるひとでも興味がない。
「空気の日記」は書籍と、web上でも読める。
三角みづ紀といえば、2009年のブログ記事をなぜかたまに思い出す。リアルタイムで読んでいた。
もう28年間生きてるはずなのに
なんでか知らんが
生きることに
慣れない
このことばを、2022年になっても反芻する。
いつまでたっても慣れない。
生きること。
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