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日記963


 

 12月☆日

 「世界最強の男選手権 2010予選」(NHK BS1)。ときどき放送してる「世界最強の男」大会、わたしはこういう、世界のどこかで一部の人だけが熱狂してる行事を見るのって好きなんよなー。見た目からして昔話に出てくる「力持ち」な巨体の男たち大集合。東欧と北米中米あたりの人が多いかな。おもろいのは競技が、具体的かつこの大会でしかやってなくて毎回違うオリジナルなこと。車を持ち上げるとかボートを崖に引き上げるとか、巨大タイヤを何回ひっくり返すか、生ビール樽を何個投げられるか、100kgの重りを持って階段を何秒でかけ上がれるか、などなど。何回も優勝してる競合やダークホース的な新星がいて、それぞれの選手のキャラがある。
 オリンピックでも、あんまりようわからん競技を「あー、そういうルールなんかー」「この人がこの世界では英雄なんやな」と推測しながら見るのが好きで、そのうちにおもしろさがわかってきて気に入った人を応援する、というのが楽しいんやけど、最近のテレビは日本人が勝てそうな競技しか中継せえへんからおもんない。世界のトップレベルの人らの競技を見ないと、その競技で強い人はいつまでも出てこーへんと思う。

 

 

柴崎友香『よう知らんけど日記』(京阪神エルマガジン社、pp.105-106)より。2010年12月☆日。「☆」は任意と解釈して本日、11日とする。

この日記を読んだとき、思わず「見てたわ!」と声に出してしまった。「世界最強の男」、見てた。ずんぐりむっくりの熊男たちが一堂に会してワッショイワッショイする大会。調べたら、いまもやっているらしい。もう10年以上、見ていない。

「世界最強の男」について書いた、むかしのmixi日記がある。あきらかに、いまより文章が生硬だ。もうすこしすっきり書けると思う。しかし、なんか頑張っている。頑張って盛り上げようとしている。過去の自分を褒めてあげたい。お前は頑張っている。ホスピタリティを感じる。いまでは失われたテンションがある。

以下コピペ。


 

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さいきん、すっかり涙もろくなりました。

先週、BSで『世界最強の男』という番組を見て、ぜんぜん泣ける番組じゃないんですけど、ある場面でうっかり泣いちゃいました。『世界最強の男』は、世界中の筋肉自慢たちが飛行機や消防車をひっぱったり、何百kgもある車やら鉄球やらバーベルやらを持ち上げたりして、タイムや持ち上げた回数などを競うという筋肉の祭典です。

泣いちゃった場面というのはいくつかあるのですが、最もじーんときたのは予選で、ある選手の息子が客席で応援する様子を、カメラが抜いたときです。
顔を紅潮させ、全身の血管を浮き上がらせながら奮闘する父。それを後押しするようにあらん限りの声を出し応援する息子。この息子がまたメガネの痩せっぽちでオタクくさく、少し屈折した雰囲気を漂わせており、そこに物語性を読み取ってしまいます。

むかしはとても強くて頼もしくて、憧れさえ抱いていた父の背中。いつからだろう、父の背中が寂しくうつるようになったのは。筋肉しか取り柄がなく、ろくろく働きもせず家にばかりいてトレーニングに明け暮れる父。

「オイ、お前、筋肉はいいぞ。たまには父さんと一緒にトレーニングでもどうだ?」

そんな父の顔は、頬にまるでうす笑いをうかべたようなシワが寄っており、剃り忘れたヒゲがところどころに伸びて、だらしがない。以前は、そんなだらしなさには目もくれずに、無邪気に父の背中へ飛びつくのが好きだった。

「いま勉強中だから話しかけないで」
「そうか、悪いな、トレーニングしたくなったらいつでも言ってくれよ。父さん、勉強は協力できないけど、筋肉のことなら何時間でも付き合うぞ!」
「いいからもう!っていうか部屋に入るときはノックぐらいしてよ!」
「わ、わかったよ。あ、ひとつだけ、いいかい」
「なに」
「父さん、こんど大会に出るんだ。その名も『世界最強の男』っていう。すごいだろ。当然、応援に来てくれるよな」
「……考えとく」
「カレンダーに書いておくからな、忘れるなよ」

応援なんか行くわけがなかった。筋肉がなんだ、筋肉しか取り柄がないなんて、大人としてどうかと思う。筋肉のどこがそんなに素晴らしいんだろう。意味がわからない。

ここから色んな事があって、徐々に少年は筋肉の素晴らしさに目覚めるんですよ。そして父がただの筋肉バカじゃないってことにも、ある事件をきっかけに気づくんです。父の筋肉は単なる筋肉ではなく、息子を想うがゆえの筋肉であったということが発覚する。

そしてなんだかんだで最終的にあの父を応援する姿に至るわけです。あそこから少年の筋肉人生がスタートするんですよ!30分考えてもろくなこと思いつかないので具体的には省略しますけど、あの少年の影にはそんなビルドゥングスロマンが見え隠れしておりました。
それでわたしは泣いちゃったの。うん。とにかく『世界最強の男』はいい番組でした。早い話が筋肉好きなんです。筋肉最高。

 

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そっか。



 

 

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