某日、松江泰治の写真展へ。品川のキャノンギャラリーSにて、3月7日(火)まで開催されている。入場無料。 キヤノンギャラリー 松江 泰治 写真展「ギャゼティアCC」 松江氏は「絶対ピント」と評されるペカーっとした写真を撮る人。説明が下手すぎるな……。すべてにピントを合わせた空撮。つまり、ペカーっとしている。極力、影を排して平面性を追求した写真だそう。空や地平線も排す。と、だいたいリンク先に書いてある。 上空から都市をペカーみたいな。都市にかぎらず、山肌や海やペンギンやヒマワリなどもあった。みんなペカー。ビル群が模様のようにそびえ立つ写真に惹かれた。くらくらする。鮮やかにピン止めされた二次元平面。影の排除は、時間の排除ともいえる。建物が面として写真にフィットしている。機械の目を最大限まで引き立てた感じ。標本的な印象も受ける。刺すような撮り方。まったく異なるが、なぜかベルント&ヒラ・ベッヒャーを連想した。 細部を見ようとして作品に近づくと、自分の影がかかってしまう。それを避けたくて距離を調節する。そんな鑑賞時の心理もおもしろかった。写真の明るさに影をさしたくない。 これはわたしの撮影。暗い……。比較にならないことは承知の上で、松江氏と比較対照してみる。比較すればなんか見えてくるはず。半分以上が影。地平線は写らないようにした。「松江泰治のように撮ろう」と思ったわけではなく。家並みを隅々まで敷き詰めたかった。ぞろぞろと。 おそらく、両方ある。松江氏の撮る鮮明な平面(等しさ)に惹かれる一方で、暗い見通しの悪さにも惹かれる。自分のなかには、さらす方向性と隠す方向性が同居しているように思う。仮に松江泰治の方法を理系的とするなら、影をとりいれる感覚は文系的といえるかもしれない。 「ペカー」はメカニックで、影はポエティック。そういう感じがする。一個の感覚に過ぎないので、いい加減な見立てだけれど。だいたい「ペカー」とはなんだ。 ともかく、自分の写真には明るさと暗さの両面がある。 これも典型的。できるだけ鮮明に暗くしたがる。明るいも暗いも、いずれにしろ鮮明に。明るい暗さ。暗い明るさ。乾いた暗さ、というか。暗くても、さっぱりしていたい。湿度は低く。切れそうな鋭い影を良しとする傾向が見てとれる。 塗装の裏に、ドアとポストのようなもの...