空前の横にずらすブームです。写真を横に寸断したくて仕方がないお年頃にさしかかってきました。だいたい30歳の前後でみなさん経験すると思います。「あ~むしょうに写真ずらしてぇ~」となるの。生理現象です。 むかしのアラサーは現像した写真を手作業でずらしていましたが、デジタル化で便利な時代となりました。写真機が登場する以前の時代には手立てがなくて、悶々とするしかありませんでした。現代はあらゆる欲望をうまく飼いならせる時代です。逆にうまいこと飼いならされているようなところもあるのでしょう。 最新の生理学分野の研究によると、アラサーで独身の御仁はこの現象に見舞われやすいそうです。友人や知人の結婚ラッシュに滅多打ちされると、じぶんだけ視界が横にずれてゆきますから。じつはずらしているのではなく、ほんとうに世界がこう見えているのです。 わたしは友人が結婚したら、すなおに祝福します。祝福できるタイプの人類です。都会にいれば、べつに結婚しなくともなんとなく暮らせてしまういまどきですから、それはそれで立派な決断として賛美したい。ヨッ!男前!みたいなノリで。東京にいると、たったひとりで、誰とつながらなくともさほど不自由せずいられます。 個人的には契約にこだわりはありません。小賢しく多様な選択肢を勘案したい。使えれば便利かなーくらい。肝心なことはひとつです。シンプルに「いっしょにいられればいい」と、それだけではないか。ほかになにがいるんだか。「いっしょ」も社会的なイデオロギーに過ぎないわけだが、そういう現代ならすなおに従う。ふりでもよき信仰者となれば生きやすい。そのために紙切れの契約が必要ならする。カネが必要なら稼ぐ。20代のまだ生きた経験が浅いうちはわからない部分も多々ありますが、わたしの求めるものは最小限かつ最重要なものだけです。太い幹さえ折れなければ。 最小限といえば、『白崎裕子の必要最小限レシピ――料理は身軽に』(KADOKAWA)という本を買ってみました。基本的に和食のレシピです。応用の効く小技がけっこう載っています。レシピではなくて、汎用性の高い小技を知りたい。塩の使い方とか、火の入れ方とか。なんにでも使えそうな調味料のレシピがいくつか載っているところもいい。そうだ、調味料のレシピ集がひとつあったらいいかな。いま検索したら『素材よろこぶ 調味料の便利帳』(...